香川県三豊市。
瀬戸内海に浮かぶ
人口僅か20人程の小さな島「志々島」。
車道は無く、島内は徒歩でまわります。
自販機やお店は一つもありません。
あるのは美しい自然と、海と、季節の花。
そして樹齢1200年という島の主、大楠。
島の守り神として鎮座するその大楠の姿に
多くの人が魅せられ、この島を訪れます。
そんな志々島は、
決して1日で回りきれないほどの島ではないけれど
ゆっくりと島を満喫するなら宿泊がおすすめ。
志々島の唯一の宿
「ゲストハウスきんせんか」に泊まって、
島の魅力をたっぷりと感じていただきたいです。
温かい島の歓迎から
島に着くと、優しい笑顔で迎えてくれたのが夫婦でこの島に移住してきたという山地さん。
ゲストハウスきんせんかを運営する方の一人で、島の休けい処「くすくす」を運営されている方でもあります。
船着き場から、島のおばあちゃんと世間話をしながら歩きまずは「くすくす」でひと休憩。予約手帳にサインをしながら、山地さんに島のことをたくさん教えていただきました。
はじめて会った気がしない様な気さくで優しいその人柄に一気にあたたかさを感じ、その後もしばし談笑。
ふと窓の外に目をやると、目の前には鮮やかな向日葵が咲いていました。
この日は年が明けたばかりの一月のはじめ。季節外れのひまわりに驚いていると、
「そうそうなんでかね、数日前に急に咲いたのよ〜!!」
と満面の笑みで微笑む山地さん。
そしてお隣の牛島で採れたというニンニクをおもむろに「これあげるわ〜」と手渡してくれるのでした。
そんなやりとりのおかげで身体は一気にリラックス。
なんかもうすでに、温かくて泣きそう。。
そんな志々島の旅の始まりでした。
島に暮らすように泊まる
ゲストハウス「きんせんか」へ
休けい処「くすくす」を後にし、志々島唯一の宿泊施設である ゲストハウス「きんせんか」を案内してもらいます。
元々志々島には宿泊施設がありませんでした。
しかし過疎化が進むなか島に人を呼び戻したいという思いで「志々島復興合同会社」が設立され、クラウドファンディングなどの様々な支援でオープンが実現したのがこのゲストハウス「きんせんか」だそうです。
一棟貸し切り型で、元々あった古民家をそのまま改装して造られています。
みかんの木がある中庭を通り、ガラガラと扉ををあけると大きな玄関に暖簾。ふかふかの布団に畳の匂い。ストーブにCDプレーヤー。
当時の暮らしがそのまま残されている家の中は、まるで田舎のおばあちゃん家に帰ってきたかの様に温かく、どこか懐かしい趣があります。
思わず「ただいま」と言いたくなるような、そんな宿です。
お風呂の壁にはきれいな富士山が描かれていて、窓からは瀬戸内海が見えます。
シャンプーやリンス、お風呂マット、ドライヤーは用意されているので、タオルや歯ブラシ、必要なアメニティは自分で用意。
キッチンにはフライパンや鍋、お皿やコップ、一通りのキッチン用品が完備されているので自由に使うことができます。多少の調味料なども置いてくださっています!
ここは素泊まりの宿なので、食事は自分達で用意します。
追記...
2022年1月より一泊二食付きプランができたようです!
家族や友達同士なら皆んなでご飯を作るのも、旅の楽しみ方の一つかもしれないですね^^
島内にはお店がないので、食料は島に来る前に用意してくる必要があるので注意。
(自販機もありません!)
海と夕陽とを独り占め
大楠に会いに行き、島の散策をして、島の最高峰である「横尾の辻」で360度の多島美を眺めながら陽が沈むまでぼーと贅沢な時間を過ごします。
志々島から宮ノ下港への最終便は15時55分。
粟島経由で帰ったとしても最終16時40分。
この日宿に泊まるのは自分だけ。なので日が沈むこの時間に島にいる観光客はもう自分だけ。
「ああ、いま島を貸し切ってる」
そんな気分に浸りながら、陽が沈むのをゆっくりと眺める。そんな幸せな時間を過ごすことができます。
宿への帰り道はマジックアワーで赤く染まる空を見ながら海辺をのんびり歩きます。
誰もいない静かな海辺。
そう歩いてるのは自分だけ。
穏やかな波の音が優しく心地良い。
この夕陽も、海も、波音も、全部貸し切り。
贅沢すぎる景色を目の前に、いろーんな感情が溢れてくるのでした。
自然を目の前にすると人は心が開放される。
きっと自然は何も言わずに受け入れてくれるから。
だから人はこうして、自然を求めるんだろうなあ。
そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にかグラデーションで輝く空に一番星が出てくるのでした。
島に泊まってこその味わうことができる、贅沢すぎる時間です。
自然で賑やかな夜
宿へ帰り、お風呂で一息ついてから用意されていたフカフカの布団を敷いて横になります。
一人じゃ広すぎるかなあと思っていた部屋も、不思議と自分の家のようにくつろいでる自分がいてびっくり。
しばらくして持ってきたコーヒーを淹れようと一度外へ出ると、この日は満月でした。
ライトなんて必要ないくらい明るく照らされる玄関口。遠くには対岸本土の光がキラキラしているのが見えます。
この島には車が走っていません。もちろん電車やバイクもありません。
そのせいなのか街の騒音から遮断された世界には、風が島を駆け巡る音、自然のざわめき、鳥の羽ばたく音、虫の泣き声。
夜になると一層、自然が生きている音がよく聞こえるのです。
「ここは自然の音で賑やかだ」
ある本でこの島のことをこう綴っている人がいました。
志々島の夜を過ごすことで、その言葉の意味がなんとなく分かったような気がしました。
「大楠」で繋がれる 心
翌日は海沿いの防波堤で静かに日が昇るのを見守りながら、最後にもう一度島の守神「大楠」へご挨拶。
朝のひんやりとした空気が気持ち良く、太陽の光に照らされて一層神々しく佇む姿に、私はもう完全にこの大楠の虜。
前日は観光客らしき方とは誰ともあわずでしたが、この日は土曜日だったせいか一便の船で何人かとすれ違いました。
皆んなそれぞれに、大楠を眺め、時を過ごす。
なんだか
”この大楠を見るために海を渡ってここへ来た”
ただそれだけで、言葉なんか交わさなくてもどこかで分かり合えてしまうような、そんな気がしてなりませんでした。
帰りの船の時間まで、また「くすくす」へ寄って山地さんにもご挨拶。
中にはいると山地さんご夫婦と常連さんがいらっしゃり、「今みんなでね、おうどん食べてたのよ!こんなんだけど、食べてったらいいわ〜」
と当たり前のようにあったかいおうどんを出してくださりました。
あったかくて、嬉しくて。
朝からおにぎりしか食べていなかった私には、泣きたくなるほど熱々のおうどんが心にも体にも染み渡りました。
そして船が来ると、
「春でも夏でも、また来たらいいのよ^^」
そう言って、温かく島から見送ってくれました。
島の人たちの
温かさ溢れる「志々島」
穏やかな海に、自然に、大楠に。
美しい景色で溢れる神秘の島。
そして、ゲストハウス「きんせんか」に置いてある旅ノートに島を訪れた人が決まり文句の様に綴っていたこと。
それは
”島の人達の優しさ” でした。
これがこの島の最大の魅力なのかもしれません。
”また来たくなる”
そういう場所はいつだって、人の温もりがある場所だと私は思うのです。
人は無意識にも人の愛を求める生き物なのです。
私も島の人全員と会ったわけではないけれど、車もバイクもない、お店も自販機さえもない。
それでも海と、自然と、そして大楠に守られているこの島の人達は、みんなすごく穏やかで優しくて幸せそうでした。
そして手入れの行き届いたこの島の風景に、私はとても愛を感じました。
お金では買えないそんな幸せが、ここには確かにあった気がします。
何千年もの時代を生きてきた大楠やこの島の人たちのように、無条件に人を愛せる強さと優しさを持てる人間でありたいと、小さくなっていく志々島を見ながら改めて思った船の帰り道。
もっと身軽になって、もっと胸張って、またここに戻ってこよう。
そんなことを思った志々島の旅でした。
あなたも是非、
大楠に、島の人達に、
会いに行ってみてください。
きんせんかに泊まって、
ゆっくりと島を満喫して下さい。
あなたにとっても
素敵な出会いが
待っているかもしれません^^
ゲストハウスきんせんか
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